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The Adventure of English 第9回

2013年11月27日

 前回と前々回でお伝えしたように、アメリカの東部、西部、南部ではそれぞれが英語(米語)に三者三様の対応を見せたのに対して、 England  では母国語である英語への過度の信頼、期待、そして懸念から、現在の時点から振り返ると奇妙でおかしくはあるが素直には笑えない、そしてどこか痛ましさも伴う、”悲喜劇”ともいえる状況が到来します。その”悲喜劇”が、今回の Mastering the Language   「英語をマスターする」、と次回の The Proper Way to Talk  「適切な話し方」です。

 尚、今回と次回の時代背景である17世紀の後半から19世紀は、英語の歴史上後期近代英語の時期に相当します。

<  Mastering the Language  >

1. The Age of Enlightenment   「啓蒙主義の時代」 

 17世紀後半から18世紀にかけての西欧は後に”啓蒙主義”と呼ばれる、人間の理性と科学的合理性に対する全面的な信頼に基づいた文化的潮流の最中にありました。この思想は当然のように言語の世界にも影響を与えることになります。17世紀には旧約聖書の(創世記による)アダムとイブの時代に存在していた ’original language’  「人類最初の言語」を発見しようとする真剣な試みがありました。”エデンの園”で話されていた言語はその純粋性(他の言語は存在していなかったので、外部からの影響を受けることはあり得ません)によってあらゆる事象や考えを完璧に描写することができたはずであり、実際にこの”人類最初の言語”はヘブライ語を研究することで発見が可能であると信じられていました。この事実から”全てのことを理解する為の鍵となる言語”という考え方が、如何に当時の学者、思想家に浸透していたかがわかります。

 17世紀の後半に、王立協会(1660年創立) ’Royal Society’   は”普遍的(標準)言語”の創造をその協会員である John Wilkins  に依頼します。この普遍的言語はあらゆるレベルにおいて国際的協調をより容易にし、これまで提供されていない真の知識を最短かつ最も容易に獲得する為の手段となるはずであると期待されていました。 Wilkins  が創り上げた”言語”は複雑で記号を使い表現するものでした。同時代を代表する思想家の ジョン・ロック (John Locke)  に推奨され、ニュートンからも好意的な意見が寄せられたにも拘らず、一般に受け入れられることはありませんでした。

 ここでも現世の言語を完全に理解することを、かつてのように詩人、戯曲家、聖書の翻訳者だけではなく学問の世界を極めたいと望んでいた多くの知識人が追及していたという事実を見ることができます。ジョン・ロックはその最も影響力を有していた著作、Essay on Human Understanding  「人間悟性論」において、言語を浄化し明瞭にすることは人類に最大の利益をもたらすと述べています。彼は、ある言葉が意味している、又は意味すべき内容をあらかじめ簡明な形式で決定しそれらを統合することによって、諍いは自然に終了、消滅し、その後には当然のように平和が訪れると論じました。

 ジョン・ロックのようなその時代における最高の知性が、言語を浄化し、議論の本質を浮き彫りにすることで諍いや争いが終わると本当に考えていたのかと疑いたくなりますが、彼はまさしくそのように確信していました。これが理性に基づく理想主義を掲げ、あらゆることに秩序を求めた啓蒙主義の思想なのです。ロックは現実に言語が人を統べるのであり、又、統べることができるしそうあるべきだと考えていました。ひとたび言語が浄化され整序されれば全ては解決すると考えていたのです。

 この”理性への信頼”の背後では、英語に対する自信と不安が錯綜していました。印刷を生業とすることにもはやライセンスは必要なくなり、印刷のコストが下がったことで本や新聞が急速に普及していきます。新聞とコーヒー・ハウスで有名な Gurb Street  が誕生しました。 England  最初のコーヒー・ハウスは1652年にオープンしました。コーヒー・ハウスでは同時代に始まった日刊の様々な新聞を読むことができ、新たな話題について他の客と語り合うことができたので、そこは ‘penny university’  として知られていました。1ペニー(当時は12ペンス(penny の複数形、pense)で1シリング、12シリング(240ペンス)で1ポンドとなります)はコーヒー1杯の値段でした。

 その一方で多くの詩人や作家が、自分達の作品は将来も翻訳家の助けなしに読んでもらえるだろうかと心配し始めます。17世紀の後半には、既にチョーサーによる「カンタベリー物語」(14世紀末)(第3回を参照)で使われていた英語の文章を読むことは困難になっていました。チョーサーの作品ですら廃れていくとするならば、将来に何も期待を持てないのではないかと恐れたのです。その結果、彼らはこの状態を打破するには英語を堕落、崩壊から救わなければならないと決意しました。

 この英語の”堕落”、”崩壊”という言葉はこれから先250年に渡って何度も登場することになります。

2. Ascertain (in the sense of  ‘fix’) the Language    

   「言語を”固定”することでその未来を確保する」

 英語をその堕落から救うことを目的として、日本でも「ガリバー旅行記、Gulliver 」の作者として知られているジョナサン・スウィフト (Jonathan Swift)  は、イタリア(1582年)、フランス(1635年)が既に設立していた母国語の将来を確保する為のアカデミーが 英国においても必要であると考えるようになりました。

 彼はそのアカデミーが”正しい”文法を規定し、不適切な表現、語彙を排除し、誤りを正し永続的な指標を設定することで古ギリシア語、ラテン語と同様に、英語で書かれた文章を将来の何世紀にも渡って容易かつ正確に読むことを可能にするはずだとの信念を抱いていました。もっとも古ギリシア語もラテン語もその発展の過程では大きな変化を遂げ、それが”固定”されたのは一般人が使うことのない”死語”になってからのことだったのですが。

 スウィフトの計画は、アカデミーの設立を働きかけていたアン女王が1714年に死去し、後継者としてドイツ出身で英語をほとんど話すことができず、又、話すことにほとんど興味を持っていなかったジョージ1世の即位(ハノーヴァー王朝の成立)によって頓挫しました。

3. Samuel Johnson

 1755年に、恐るべき学者であり、その機知によって London  社交界の君主となり、その時代の知性の光と言われ、残酷なまでに憂鬱症で、ニュートンと同じく常に常軌を逸していたサミュエル・ジョンソン編纂の英語の辞書が出版されます。彼はその編纂を、ほとんど他人の助力を得ることなくして7年で完成させました。これに対してフランスのアカデミーでは、同じく辞書の編纂に40人の会員が約55年の歳月をかけました。この事実から彼は3人の Englishmen は少なくとも100人の Frenchmen  に匹敵するという結論をフランス人へのねたみと嫌悪から導いています。

 4万3千語を収録したこの辞書は初めて語彙についての例文を記載し、これがこの辞書の重要性の核となります。ジョンソン博士は当初スウィフトによるアカデミーの設立計画と同じ様に、この辞書によって英語の発音は固定され、正しい発音が容易となり、その結果として英語の純粋性が保全され長期間に渡りその将来が確保されると目論んでいました。

 しかし完成を目前にしてその序文を作成する時点で彼は、「しばらくの間、私はこれで英語が揺るぎない言語となるであろうと自惚れていました。しかし今になって、単に合理的ではなく経験によっても正当化できない甘い期待感にふけっていただけではないかとの恐れを抱き始めたところです。」と記しています。彼の現実主義と誠実さは、英語が持つ活力と生命力に直面することで痛ましくも劇的な心情の変化を見たのでした。

 その辞書には編纂者の独特な性格を反映して、技能、製造、法、医学、自然科学に関する語彙は収録されていません。更に彼が”一時的な流行語”と判断した語彙も除外されました。このような問題点は残ったにせよ、当時その辞書は圧倒的な権威を有し、更に、英語の文芸の分野における偉大な才能が一人で語彙の体系化を成し遂げたという偉業は、英国民のプライドを満足させることにもなりました。

 ここで彼の辞書の一部を覗いて見ましょう。

     Ruse:  cunning; artifice; little stratagem; trick; fruad ….

                  A French word neither elegant nor necessary.

                  (狡猾、ペテン、ちょっとした計略、罠、いかさま etc    

      優雅ではなく必要でもないフランス語)

    Oats:   a grain, which in England is generally given to horses

                   , but in Scotland supports the people

                  (オートムギ: 穀物; England  では一般に馬の飼料だが、

               Scotland では人の主食である)

     Tarantula;  an incect  whose bite is only cured by musick.

       (タランチュラ: 昆虫の一種 (毒グモ)、かまれると音楽だけが

       治療方法となる)

最初の語はフランス人への、2番目の語はスコットランド人に対する悪意と偏見に満ちていて、3番目の語は全く正確性を欠いています。

 当然とも言えることですが、この辞書には粗野な、もしくは洗練されていないとジョンソン博士が断定した語彙も収録されていません。これに関して、ある上流階級の二人のご婦人がジョンソン博士にその理由を尋ねた時に彼は、「何ということを!そうするとお二人ともそのような言葉を調べていたということでしょうか。」と返答したという逸話が残っています。

 その一方で彼は自分自身も容赦しません。どこか憎めない Endland  らしさとも言い得る彼のもう一つの特質です。

     Lexinographer:  a writer of dictionaries; a harmless drudge that

          busies himsel in tracing the original, and detailing the

   significance  of words

       (辞書編纂者: 辞書の作者; せわしなく語彙の語源をたどり、そしてその  

    意味の詳細な記述を行うことに取り組む毒にも薬にもならない勤勉家)

  Dull:  not exhilarating, not delightful:  as, to make dictionary is

                 dull work. 

        (退屈: うきうきしないこと、楽しくないこと: 例えば、辞書を作ることは

                        退屈な仕事である。)

 

このような“悲喜劇”は次回も続きます。

 

To be continued.