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The Adventure of English 第1回

2013年10月04日

 おおよそ1500年に及ぶ”英語の歴史”シリーズの第1回です。1500年前にはゲルマン諸語のひとつである西ゲルマン語の一方言にすぎなかった”英語”(当時この方言を話していたのは、わずか15万人程度でした)が、現代の世界において事実上の標準言語としての地位を確立する(21世紀初頭の時点で約15億人が英語を話します)までを描いた壮大な歴史物語の始まりです。

 第1回は、”英語”の生い立ちから最初の危機を乗り越えた時期、具体的には5世紀中頃から11世紀前半までが舞台となります。いわゆる古期英語の時代です。

<  Birth of a Language >

1.海を渡ったゲルマン民族

 4世紀の後半(375年)に始まるゲルマン民族大移動の一環として、現在のオランダからデンマークの南部に至る北海沿岸(フリースラント)を新たな定住地としていた3つの部族、ジュート、アングル、サクソン(フリースラントという地名からフリース人とも呼ばれています)は5世紀初頭に当時の大ブリテン島を支配していたローマ帝国が軍を引き揚げた政治的、軍事的空白に乗じて、5世紀の中頃から6世紀の前半にかけて大ブリテン島へ渡ります。そして先住民族であるケルト系のブリトン人を辺境(現在のウェールズ、スコットランド)に追いやり大ブリテン島の大部分に定住します。興味深いことに、後には何であれ遭遇した他の言語から貪欲に語彙を吸収することが英語の本質的属性となりますが、この時点ではケルト系の言語から取り入れた言葉はほとんどありません。

 England という地名は上記アングル(Angle) 人の土地 (land) に由来し, ”アングロ・サクソン” とはその土地に住むサクソン人を意味しますが、サクソン人のみならず大ブリテン島に渡来したゲルマン系の民族の総称として使われているようです。

2.ラテン・アルファベットの採用

 当時のゲルマン人は現在のアルファベットではなく”ルーン文字”(ルーン・アルファベット)を使用していました。ルーン文字はほぼ直線で構成されている為、木の板などにナイフで文字を刻んで短いメッセージを伝えるのには適していましたが、長く複雑な内容を記述することには向いていませんでした。

 6世紀の末にローマ帝国のブリタニア放棄以降200年ぶりにキリスト教が England において復活します。カトリック教会の公用語だったラテン語が宗教の分野のみならず学問や文芸の分野でも標準言語となるにつれて、アングロ・サクソン人はそれまでのルーン文字に代えて英語の表記にラテン・アルファベットを使い始めます。同時にラテン語を語源とする語彙も多数”英語”の中に入ってきました。

 ラテン・アルファベットは当時使われていた羊皮紙に書くことに適していました。アルファベットの採用以降、多くの宗教、学問、文芸に関するラテン語の文献が英語に翻訳されるようになりましたが、筆写が容易であることにより優れた学術的内容をもつ書物が広く読まれるということも可能となりました。当時のヨーロッパでラテン語ではなく自国の言葉で書かれた書物がこれほど普及していた国は England 以外に存在しませんでした。

 8世紀から9世紀にかけて書かれ、トールキンの「指輪物語」にも影響を与えたといわれるゲルマン叙事詩、ベオウルフ(ベーオウルフ)は英語が詩的表現の分野においてラテン語に劣らない多彩な表現や独創性を発揮できることを証明した画期的作品となりました。

 このように、外来の言語に吸収されてしまうことなく、その優れた部分を積極的に取り入れて自らのものとしてしまう”開放性,吸収性”と”柔軟性”こそが英語の強さの秘密なのです。

3.最初の危機

 ゲルマンの諸部族による群雄割拠の時代を経て7つの王国に分かれていたEngland は9世紀初めに一旦統一されます。その過程において8世紀以降、現在のデンマークに住んでいた北方ゲルマン民族(いわゆるヴァイキング)のひとつであるデーン人が断続的に襲来します。その結果(旧)七つの王国は南西部に位置していたウェセックスを除いてデーン人の支配下に入ります。この時点ではキリスト教に改宗していなかったデーン人は当時のヨーロッパにおいて第一級の図書館をそなえていた修道院や教会を焼き討ちにし、貴重な英語による文献はほとんどが焼失してしまいました。 England 全土がデーン人の支配下に入り、アングロ・サクソンによる国家や文化、とりわけ英語が消滅してしまうのも時間の問題のようでした。

 この危機のさなかに England を、そして”英語”を救う英雄が登場します。ウェセックス王 アルフレッドです。デーン人との戦いに勝利したアルフレッドは886年の休戦協定によってLondon を含むテムズ川以西の England を確保します。その東側はデーン人が支配し Danelaw (デーン人の規律が及ぶ領域)と呼ばれました。又、上述した七つの王国のうち唯一デーン人の支配を免れたウェセックスで使われていた”方言”がやがて古期英語の”標準語”としての地位を確立していきます(七つの王国ではそれぞれが独自の”方言”を話していました)。

 デーン人との戦いから解放されたアルフレッドは壊滅的打撃を受けた学問の復興に力を注ぎます。アルフレッドは民衆を教育するには書物が必要だがその言語はラテン語ではなく、日常使われている”英語”によることが適切であると考えていました。アルフレッドの積極的な支援のもと、この時代に再度ラテン語の文献の英語への翻訳が大規模に進められました。

 同時に、この休戦協定がもたらした平和はデーン人とアングロ・サクソンとの交易を促進することとなり(交易以外の場合を除いてテムズ川から、ローマ帝国の属州だった時代に整備された Watling Street に沿った境界を超えることは許されませんでした)、”英語”もデーン人が使用していた古ノルド語 (Old Norse, これもゲルマン諸語のひとつです)から大きな影響を受けます。文法面では英語の語順は古ノルド語の語順の影響を受け、さらに前置詞が使われるようになったのも古ノルド語からの影響によるものです。語彙の分野では、sky, knife, window, anger, they, their, them 等、古ノルド語を語源とする多数の語(表現)が英語の語彙に入ってきました。その際、一部については同じような意味を持つ英語と古ノルド語の語彙が併存することになります。例えば、英語の craft と古ノルド語の skill ,英語の sick と古ノルド語の ill などがあります。ラテン語に続いて古ノルド語の語彙を取り込むことで、英語の語彙は一層豊かになります。言語としての”英語の強さ”の背後にある”開放性、吸収性”と”柔軟性”がここでも発揮されました。

 又、現在の England において一般的な姓である Harrison, Johnson, Richrdson, Watson, 等は父親の名前の後にその息子であることを示す son を加えたデーン人の習慣に起源をもちます。 

4. The savior of England

 アルフレッド はEngland と English を滅亡から救った英雄として歴代の王の中で唯一”大王, the Great”と称されています。

 

 デーン人との戦いはその後も続き、11世紀の前半には一時 England 全土がデンマーク王国の一部となりました。その苦難の時もなんとか耐え忍ぶのですが、安堵する間もなく英語にとって最大の危機がすぐそこに迫っていました。

 

To be continued.

 

 尚、この連載(毎週更新する予定です)は 英国人の作家、 Melvin Bragg 氏による著作 ”The Adventure of English” とBBC が2002年に制作した同名のTVシリーズ(Youtube でご覧頂くことができます)を題材とし、その内容を(日本人にとって興味深い点を中心に)要約したものです。又、私は未読ですが、同タイトルは「英語の冒険」として講談社の学術文庫から刊行されています。

各回のタイトルと概要は以下の通りです

第1回  Birth of a Language

        英語という言語の誕生から最初の危機を迎えた11世紀の中ごろまで

第2回  Norman Conquest of England

    ノルマン人による  England  征服に続く英語にとって最大の危機の
    時代となった150年(1066年~12世紀末)

第3回  Holding on

    苦難の時を耐えて一歩ずつ復活していく英語(13世紀諸島~15世紀
    末)

第4回  English and the Language of the State

    王国の公用語に返り咲いた英語の文語面での標準化について

第5回  God’s English and William Tyndal’es Bible

    英語の聖書の実現に生涯を捧げた  ジョン・ウィクリフ と
            ウィリアム・ティンダル 
    

第6回  Shakespeare’s English

    ウィリアム・シェイクスピア登場に至るまでの英語を取り巻く背景につい
    て

第7回  My America

    アメリカに渡った英語の北東部編

第8回  Wild West and Sold Down the River

    アメリカ英語の西部、南部編

第9回  Mastering the Language

    英語の母国  England  での英語にまつわる“悲喜劇”の前篇

第10回  The Proper Way to Talk

    英語にまつわる“悲喜劇”の後編

第11回  Steam, Streets and Slang

    産業革命と英語、階級制度と英語

第12回  Indian Takeover

    英語の海外進出、インド支配と転覆に貢献した英語

第13回  West Indies

    カリブ海領域での英語、Pidgin (混成語)、Creole (非ヨーロッパ言語
    とヨーロッパ言語の混交語)、そしてカリブの海賊

第14回  Advance Australia

    オーストラリア英語という独特な語彙、アクセント、そしてワルツィング・
    マチルダ

第15回  Warts and All

    英語のネガティブな側面について

第16回  Neverending Story

    事実上の世界標準語としての英語の現状と将来像